現地採用として働いて思うこと


現地採用をしていて思うことをいくつかのテーマであげてみた

◆退職金

 普通は勤続3年以上だと退職時に退職金がもらえると思うが、現地採用の場合はこれがない。わたくしごとだけれど、私の母親はずっと働いているので来年で勤続20年になり、そのときもしやめたら退職金が1000万円近くもらえるとかもしれないといっている。「入社したときは何もわからずこの会社に入ったけれど、やっぱりやめるときになって数百万円もらえるのと、一円ももらえないんじゃ全然違うよ。今は若いから大きなお金がないのも苦でもなく、大きな問題ではないかもしれないんだけど、ずっとそのままじゃだめだよ」といわれた。日本を離れて働くのはいいけれどちゃんとした条件で働きなさいといつも母親にいわれる。同性の親として、遅くまで毎日働く母親のように私は働けないわ〜と思う反面、バリバリ働いて稼いでうらやましいなぁと思う。私が彼女と同い年になったとき私は同じくらい社会に貢献して、会社に必要とされて、同じくらい報酬をもらっているだろうか。もし私がそういうことを希望するならば、今だけを考えないで先をよくみて色々なことを決めなければならないと思う。

◆ずるずるとのびる滞在

 現地採用の一つのよい点でもあり落とし穴でもあると思うが、現地採用は会社に帰任を命じられたりすることがなく殆どの場合自分でいつまで中国滞在するかどうかを決められる点だ。現地採用の契約は1年だったり2年だったりなのでそのときに契約更新されなくて離職することはあるだろうが、現地採用をまた探すという手があるので、離職=帰国ではない。ということで現地採用の仕事を続け長く天津に滞在している人が多い。ずるずる同じような状態で滞在してしまいがちだということ。そして人材会社の人曰く、中国で現地採用の経験だけでかなり長く滞在してしまった場合、日本に帰っても転職しにくいとのこと。理由は中国滞在が長すぎて中国色が強くなりすぎ会社としても使いにくいというのと、やはり日本での正社員として就労した経験を仕事の経験としてみる傾向があるというのもあるのかもしれない。だからずるずると現地採用を続けての長期滞在は個人のキャリアからみるとあまりよいものだといえない。長く滞在すれば中国語がうまくなるじゃないか?という話があるかもしれない。しかし会社からみたら、長い間中国に滞在してかなりうまくなった人よりも、中国語は少し不便があるけれど他にその会社にとって有益な技能のある人の方がほしい人材だと思うからだ。中国語だけで人を採用することは新卒の採用以外ではあまりないと思う。完璧な中国語よりも他の技能+中国語の方がほしいものなのだ。特殊な仕事では完璧な中国語が必要かもしれない。しかしいたずらに長い間中国に滞在して身に付けた中国語の能力のよりも、長い間滞在して薄れてしまった日本の感覚、生きたニュースを得るチャンスと自分自身がさらに年を重ねてしまったことを考えると、決して長く滞在することが有益なことだとは思えない。

◆お金のためじゃないから

 現地採用として中国で働くことを選ぶ理由の一つには、中国で働く経験は誰にでもできるものじゃないし、若いうちの数年間自分の経験のために中国で働こうと思う。お金のために働くわけじゃないから給料が少なくても関係ない、という考えがあるとおもう。私もそう思った。そして天津で働いて本当に日本では得ることのできなかった経験ができたと思う。若いときに3年以内で現地採用で働くことはいい経験になるとは思う。若い時は大きなお金もさしあたって必要ではない。けどそれはいつまでもそうじゃないだろう。将来自分で収入を得なくても生きていけるというのなら話は別だけれど、人並みに働いて収入を得て生きていこうと思っているなら、ずっと「お金のためじゃないから」という言葉を使っていられないだろう。結婚したらどうだろう?親から完全に独立したらどうだろう?子供ができたらどうだろう?親が、あるいは自分が病気になったらどうだろう?いろんな将来のことを考えてそれでも「お金のためじゃないから」といって現地採用を選ぶことができるだろうか。

◆迷っている皆さんへ

 現地採用とは、「現地採用に向いている人」で書いたような人に向いている他に、期間限定で(3年以内)で経験をつむために働くのは可だと思う。だけど、中国に長くいたいなら、あるいは長く付き合いたいなら、現地採用はお勧めできない。回り道になるようでも日本の会社に所属して中国とかかわれる仕事を探すことをお勧めする。やはり中国に滞在してある年度を越すと、初めて中国にきたときとは同じ気持ちでいないことに気づく。そして給料が少ないとか、福利厚生がよくないとかいう理由で中国滞在を嫌なものにしてほしくはないし、そういう状態では長く滞在できなかったりする。縁があれば必ずいける中国。自分は中国が大好きだから現地採用でいいから今すぐ行きたいんだ、という気持ち、それはすばらしい活力だけど、人の考えは変わるもの、中国に滞在する間にも自分の考えは変わっていく。そのときに現地採用ということが足かせにならないような、そういう中国とのお付き合いを皆さんにはしてほしい。

◆私いつまでいるの?

 天津にいる日本人の間ではよくきかれる質問「いつまで天津?」駐在員の人は会社がきめるが、現地採用の人は自分できめなければならない。私は「今年はいる」「あと1年か2年くらい」というふうに答えることが多かった。この問題を現地採用の人は絶えず自問自答しなければならない。

◆ピリオドを打つとき

 決心をして現地採用で働いている会社を退職することにしたとしよう。そのとき会社は何をしてくれるだろうか?帰国のチケット、帰国する荷物の郵送、借りているアパートの処理(普通は半年か1年の契約なので契約違反でお金をとられる可能性がある)これらのものを会社はきっと少しも心配してくれないだろう。帰国する前に済ませておかなければならない手続きは結構ありばたばたするものだ。私の知る人は現地採用を契約更新されなかったため帰国になったけれど、その月の25日まで出勤でビザを30日までで申請しようとしていたらしい。5日ですべての手続きをすませて帰国することは不可能に近い。現地採用の人はホテル式アパートみたいところに暮らしていないから、食器やら炊事用具が沢山有りそれらの処理も時間がかかるし、電話やインターネットを自分で申し込んでいるならいちいち出向いて退会の手続きをふまなければならない。しかし契約更新をしないと決定をする人は、なんでもそろっているアパートに住んでいるし、手続きも会社の中国人スタッフがやってくれたりするので帰国が決まってもすぐに準備ができるという考えだったりする。だから5日で帰国させようといった決断を思いついたりするのだろう。何事もそうだとおもうけれど退くときに自分のために誰が何をしてくれるか?それを考えると色々なことが見えてくると思う。

◆失業保険もなし

 以前の上司が昔現地採用をしていた人にこういった「日本に帰ったら新しいスタートをきってください」会社はそれ以降のことは一切関与しない。失業保険もなし。退職金も、失業保険もなく、無職になってまた新しい仕事を探さなければならない。現地採用から本社採用になったという話もなくはないので、まったく可能性がないとはいわないけれど、そのかすかな可能性にかけて現地採用を考慮するのはやめたほうがよいと思う。うちの会社の総経理は私にこういったことがある。「なら本社に試験うけて入ってくださいっていう話だよ、君」特に大手の会社の人はそう思っている人が多いのじゃないか。本社の正社員として入社した自分は、現地採用よりもとってもえらくて、現地採用の人は正社員として会社に入れない人という風な考えがあるのではないのか。確かにその通りなのかもしれない。私達現地採用は本社の正社員の試験を通った経験はない。が殆どの人はそこの入社試験を受けていないと思うし、そのことよりも中国にいたいとか、中国語を勉強したいとかそういう理由で現地採用を選んだ人が殆どだと思うから。正社員と現地採用との間にあるその違いを、待遇や給料、福利厚生の面にちゃんと反映して私達はそれを受け止めている。だからそれに加えてそこまで見下す発言をしなくてもよいのじゃないかと思う。

◆おみやげ

これは大きな問題ではないが、とりあえずうちの会社ではちょっときになるので書いてみた。うちの会社の日本人は中国のお休み、日本のお休み、出張などで日本に帰る機会が多い。そのたびに日本のお菓子をお土産にかってきたりするのだけれど、それが私達現地採用にまわってくることがない。しかし私のすぐ近くの席の総経理秘書のような仕事と駐在員のチケット手配や通訳などをしている中国人スタッフ2名には毎回たくさんのお土産が来る。確かに彼らは日本人じゃないから、日本のお菓子を食べる機会は私より少ないかもしれない。それにしてもいつも休みあけは抱えきれないほどのお菓子をもらって、これは○○部長から、これは○○からって私に分けてくれるのをもらうだけの私は自分は何なんだろうか?とふと疑問になってしまう。同じ日本人だけど私達は自費になるため彼らと同じように頻繁に日本に帰れないし、日本人の彼らを普段サポートしてあげる中国人スタッフとは違うところに位置付けられているし、一体何なのだろうと思う。別にお菓子がほしいわけじゃない、私もお菓子を買えないほど給料が低いわけじゃないのだけれど、ただふとそんなところが気になってしまう。同じように私達は日本からきたお客さんとの食事会に一度も呼ばれたことがない。かといって公認会計士さんや銀行さんとの食事会(中国人スタッフ+日本人上司一名の形が殆ど)にも私はよばれることはない。日本人責任者の会議や、海外生活での留意点などという会にも呼ばれないし、日本からのお客様に紹介もしてもらえない。中国人の会議によばれることもあまりないし、中国人スタッフとしての昇給昇格を期待されることもない。どちらともつかない平社員なのだけれど日本人としてのマナー、やり方は要求されるし、中国人の平社員のような仕事のやり方をしていると「日本人雇っている意味がない」といわれてしまう。日本人として期待されることと、日本人駐在員じゃないからといって中国人平社員としてみられるところのバランスが理不尽で仕方がない。都合のいいように、日本人、中国人という言葉を使い分けられいているように思う。

◆だんだん厳しくなっていく条件

 今よりも低コストで日本人を雇いたいという企業の気持ちが働いて、現地採用の条件は毎年厳しくなっていっている。現地採用とは元々駐在員を置くよりも安い金額で働いてもらえるという点があって誕生したそういう制度なのだからコストダウンを望む企業の気持ちもよくわかる。実際現地採用を採ろうとする企業はゆるやかに増えているような気がする。私の勤める会社でも条件は厳しくなった。私が入社する1年前に入社した現地採用の人は1年経過したときに数百元の昇給があった。私も1年たったら昇給するものだと思っていたけれど私の昇給はたったの20元だった。その他に医療費の問題、全ページでも書いたが、医療費のことでもめて以来、日本での医療費(無保険)が会社でもってもらえなくなった。そのことを最初に入社したときと契約が違うといって抗議したところ「会社は入社したときの状態とずっと同じでいられないんだよ。われわれだって皆給料が下がったんだ。それが嫌だったら他の所へいってくれればいいだけだ」といわれた。他に知り合いのホテルで働く方からきいたところ、そこでも現地採用の人にホテルの一人部屋を提供していたのが、今は相部屋しか提供しなくなったらしい。キッチンもないホテルの一室に違う国からきたスタッフと一緒に暮らすらしい。女性もそうだし、男性もそうらしい。ホテルやマンションでの仕事って、いいところに住めるっていうのが一つの魅力だったりするのに、そんなプライベートのない生活環境なんてかえって現地採用の定着率が悪くなるだけだと思う。

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