5日目 「成都の夜」

ホテルへ到着

 ホテルは1日目と同じ交警賓館にとまることにした。長時間バスに乗っていてやっと普通の場所で休めるのがうれしかった。私は部屋で休むつもりでいたけど李が「友達が来るから準備しろ」という。まじ!?聞いていないんですけど。確かにバスに乗っている時から「重慶から成都まで車をもってきてくれ」という電話をしているのは知っていたけど、李は普通語をあまりしゃべりたがらなくて四川方言を話すので私は具体的なことは全然ききとれていなかった。かなり疲れていたけど仕方がない、どうせ夕飯の時間になったら外に出て食べるのだ。メンバーは1日目に登場した方さんと、李の働く市政府で一緒にプロジェクトに取り組んでいる張さん。それともう1人名前も言及されなかった陰の薄い男性が1人いた。張さんはみたところ30歳前後で中国北部の黒龍江省出身の男性。体格はふくよかで、そこからお金がある人ということがみてとれる。中国に「富態」という言葉があるけれど、中国では体格がふくよかであることは、富の象徴だ。裕福でない人は食べるものがないので痩せているという観念があるからだろうか。実際のところ、中国で「食」は安いので貧しくて食べるものがないという人は非常にすくない。貧しくて病院にかかれないとか洗濯機が買えないという人はいても、ご飯を食べられないという人は少ない。だからそのふくよかなのが富の象徴というのは、どちらかというとお金がある人にふくよかな体型なのが多いというところからきているのだろうと予想する。確かにふくよかな体型な人で経済的に貧しい人はあったことがない。ちょっとした小金持ちの男性はだいたい、ビール腹の延長のようなふくよかさに、スーツを常時着用し、セカンドバックを小脇に抱え自分で車を運転する、あるいは人に運転させて車に乗っているイメージだ。ちなみにスーツの色は紺色あるいはベージュ系。薄いグレイは農民や物売りの人が着るスーツの色と一緒になってしまうのでグレイの色はあまり着ない。30元くらいで売っているスーツがすべてグレイの色なのだろう。物売りの人は特に皆そろってグレイのスーツを常時着用している。

夕食

 皆そろったところで食事にいくことにした。どこにいくのかとおもいきや私達のとまる「交警賓館」のすぐとなりの「鶏毛店」という名のレストランだった。李は重慶在住、方さんは成都出身、陰の薄い人も成都か重慶で、これだけなら四川方言で話しがすすむのだけど、張さんは重慶に滞在しているものの黒龍江省出身なので四川方言はあまり話せないので、一応基本は普通語で会話が進められる。これで私も会話がききとれる。方さんとか李も私には個人的には普通語で話してくれるけど、私以外とは四川方言だから会話がよめない。外国人で普通語でも苦労するのに習ったこともない方言をきくのはかなりつかれる。

 食事はまあまあだった。誰かが生野菜のからし和えというのを頼み、日本人はからしをつけてたべるのが大好きだと思いこんでいる彼等は、私のために頼んでもいないのにからしを沢山入れるように頼んでくれた。でてきた辛し和えは辛すぎて食べられなかった。からしがそんなにはいれなかったらあっさりして美味しい料理なのに…。他にあっさりした料理といえばウサギの肉をゆでて、棒棒鶏(バンバンジー)のようにタレにつけて食べるという料理があった。何も考えずに食べたけどこの肉がウサギだったなんて…、でもけっこう美味しかった。鳩の肉に少しだけにている。以前ウサギを3匹も飼っていた私としてはウサギを食べるなんて自分でも信じられない行為だけれど、調理されてお皿の上に出てきたウサギのお肉は美味しく罪悪感を感じないのであった。

ダンスホールへ

 ご飯をたべたあとは皆で遊びに行くことに。方さんは成都の出身なので方さんが道案内をする。これから皆で踊りに行くという。踊りといわれて私は天津でもよくいくクラブみたいな、激しくダンシングするようなところを想像していたのだけど、実際はチークダンスをお姉ちゃんと踊る怪しい場所だった。なぜにこんなところに私を連れてくる!?チークダンスをする場所の脇には沢山の綺麗に着飾ったお姉さんが沢山ならんでいる。5元(75元)で一曲チークダンスをしてくれるんだって。男性はそこで女の子を選んで1曲5元で踊って、あとはテーブルに一緒についてもらってお酒を飲んだりして楽しむようだ。すごいところにきてしまった。李は私と踊ろうというけど私は断ったのでそのお姉さん達から好きな子を選んで踊っていた。方さんもさっさと綺麗なお姉さんを選んで楽しそうに踊っていた。張さんと影の薄い人はそういうのはあんまりすきでないのかおどっていなかった。紅一点の私は何をすればいいのーって感じだった。とりあえずテーブルについてジュースを飲んでいた。ダンスするところ以外に、ステージがあってそこでも綺麗なドレスをきた女性が歌を歌って小さなショーになっている。大きなテレビ画面もある。方さんがお姉さんをつれて戻ってきた。とりあえずは皆そろって飲み物を飲んだ。少ししたら方さんが張さんに女の子を誰か連れてくるようにすすめるので二人は踊りに行ってしまった。李はお姉さんと踊ったけれど女性をテーブルまでは連れてきていない。たぶんテーブルまできてもらったら他にお金を払わなければならないのだろう。影の薄い人はずっと1人だ。すると李と影の薄い人は「ちょっとでかけてくる」といって出ていってしまった。私は1人になってしまった。何もすることがない、ステージやテレビをぼーっとみていた。成都まできてこんな場所で何をしているのだろうか。確かにこんなところ滅多にこられないし貴重な体験なのだけど、成都の観光地もまわっていないのになあ。誰も帰ってこない。お手洗いにいってみた。1曲5元踊るお姉さんが沢山いた。一生懸命化粧をする人、電話をしている人もいる。彼女達は綺麗に着飾って、沢山の男性に気に入ってもらってお金をもうけようとしているのか。確かにただチークダンス踊るだけならよい仕事だ。私もすることないしあそこに並んで立っていたらお小遣い稼ぎでもしようかしらとふと考えた。

張さん、方さん戻ってくる

 テーブルに戻って大分ってやっと方さんと張さんが戻ってきた。私が1人でいたのでびっくりしてた。私は唯一の知り合いである李と一緒にいると思ったみたいで李はもう1人の人と一緒にどこかにいったと知ると「まったく、あいつが君をここに連れてきたのに君の相手もせずにどこかにいくなんて。あいつは遊び好きだから、かわりに誤るよ」といってくれた。確かに、旅先の貴重な時間を退屈にすごしたけれど、彼等が誤ってくれるなんてちょっと意外だった。李にはそういう認識はないみたいで、一緒にでかけても、自分の友達とか知り合いの自分より目上の人をつれていて、その人に尽くしたりして私はほぼ無視される。必要なところでは話しかけてくれるから不便はないけれど、自分の友人と四川方言でずっと話し私も何を話しているかあんまりわからない。李は自分が地位も財産もないから回りのお金持ちや地位の高い人に尽くして気に入ってもらって、おごってもらったり良い待遇をしてもらっている。それを常としているので、私のように何のみかえりがない人だけのためにお金を費やしたりはしたくないみたいだ。中国では普通男性がおごってくれるので、私とでかけると男性である李がお金を払ってくれる。もし私のほかに李の知り合いがいてその人が地位の高い人やお金持ちであったら李はおごってもらえるし、もしそうじゃなく李がはらうことになっても次は李がおごってもらえる番がやってくる。私1人に投資しても金銭的なみかえりが得られない。だからいつも人を呼んで大勢で食事をしたりでかけたりするのかもしれない。九塞溝から成都へ戻って方さんや張さんを呼んだのはそのためだ。さらに、成都に家があるけど重慶で仕事をしている方さんを誘って成都に来たのは、成都で世話をしてもらおうとと思ったからに違いない。それに中国の習慣で外からのお客さんが自分のところに来たときはとても熱烈に接待する。たとえば重慶を生活拠点にしている李と成都出身の方さんを例にとってみると、李が方さんと成都にいくならば成都は方さんの故郷だから方さんは食事の世話をしたりどこかにつれいってあげたりしなければならない。もし方さんが李と同じ位の地位、経済的なレベルだったならば方さんは李にもっとつくさなければらないだろう。その代わり方さんが重慶にきたならば李は彼と食事に行ってお勘定を払うし、高いタバコを買ってあげて火をつけてあげる。方さんは李よりも地位も経済的レベルもかなり上なので、ここでは「場所」の法則よりも「地位」の法則の方が優先されるが、その地位の法則に当てはまるのが張さんだ。張さんは黒龍江省出身だから、成都も重慶も彼にとっては歓迎される側のはずなのだけど李は張さんみたく経済的条件がないから李が成都でおごる必要はない。方さんは成都の人で歳も張さんより大分上だから2人だけなら方さんがおごるのだろうが3人だったら張さんの場合もありえる。それともう1つの勘定の鉄則「誘った人が支払う」これもまた経済的レベルが関係してくるけど、基本的には誘った人が支払いをすることが暗黙の了解になっている。割り勘は大都市の若い人達の間ではあるけれど非常に少数だ。以上色々な私の理解しにくい支払いに関する法則があるのだけれど、まあ若い女性が払う場面は殆どないので私は楽ちんだ。

上着を一枚脱いだら

 張さんもお姉さんを連れてかえってきたんだけど、1人でいる私をきにかけてか話しかけてくれた。「君が一枚上着を脱ぐなら一緒におどるよ」という。単純にこの言葉をきいたらセクハラだけど、そのとき私は確かにボアボアの上着をきて厚着をしていた、踊るような格好ではない。私もただ座っているだけですることないから張さんとでもおどるかと思って踊ることにした。張さんとはその日あったばかりでどんな人かわからないけどまあ悪い人だはなさそうだ。方さんのほうがなにかと私を気にかけてくれるので良いイメージはあるけど、方さんはさっさとお姉さんみつけて仲良くしているし、私と踊ろうなんて言い出しそうな人ではなかった。年齢をみても結婚して10代の子供がいるような歳だし(後で離婚したばかりと知る)張さんは30歳前後だから結婚しているかしていないか微妙なところだ。だけど、張さんの地位や話し方からすると独身の感じは感じられずとっくに結婚して2、3歳くらいの子供がいるようにみえた。

いざダンスを

 さてチークダンスをおどろうとした。チークダンスなのに私が距離を保っておどろうとするから張さんは「なんでそんなに離れているんだ?」ときく。何故私達が親密にくっついておどらなければならないの?私はとりあえず「だって張さんは結婚しているから奥さんに悪い」と答えた。張さんは「彼女はいる、でも関係ないよ」という。張さんの風格で彼女っていう感じじゃないけれど、まあ張さんがそういうならそうなのだろう、結婚はまだしていなくて彼女がいるだけなのだろう。彼女がいるのにチークダンスするのもよいことじゃないけどまあいいか、どうせ私は明日には天津に帰るし、張さんの彼女がここにいるわけでもない、することがないし一緒に踊ったというだけだし。私はそう考えていた。踊りながら張さんと話しをしたけど久しぶりに北方人の話す普通語をきいた。李も方さんも私には普通語で話してくれるのだけど彼等の話す普通語と北方人の話す普通語は少し違う。何が違うって説明はできないのだけど、聞いていてやはり違うように聞こえる。張さんは黒龍江省出身だけど上海の会社で働いていて上海から派遣されて重慶にいるそうだ。四川方言は少しできるそうだけど、重慶の今の職場は北方の人が多いから普通語を話すことが多いそうだ。私は北京で普通語を勉強したから北方人の話す普通語の方がききとりやすい。張さんは日本では結婚後旦那が外で女性と遊んだりすることを奥さんが管理できるのかと質問した。うーん難しい問題だ。私はまだ結婚していないし、まわりに結婚した友人もあまりいないので、日本の夫婦の状況は理解していないのだけど、中国とは少し違うような気がする。浮気や不倫ということでは日本の方が民間に浸透しているような気がする。逆に中国では浮気や不倫は特にお金持ちの間ではよくあるような印象だ。特に男性がお金持ちでもう1人の女性を養える能力があるなら浮気する、といった感じだ。浮気された配偶者の方も何も言わないことが多いみたいだ。意見したところでやめてもらえるかどうかはわからないし、離婚を迫られて離婚したら今までのような裕福な生活はできなくなるので黙認してしまうのだろうか。最近は中国でも離婚率も増えてきて現状は変わりつつあるのかもしれないけど、今までの感覚ではこうなのではないだろうか。張さんにそうきかれたときは、考えがまとまらずに仕方なく適当に答えた。

 チークダンスの音楽なのに「北国の春」中国語版が流れた。チークダンスに全然合わない。張さんに「これは日本の古い歌でこういう曲(演歌)は若い人よりも年齢の上の人が好んで聞く歌なんだ、だからこういうところでかかるとおかしく聞こえる」といった。でもこの「演歌」という感覚が伝わらなかったみたいだ。「これは大人のダンスだからあっているじゃないか」って。たしかに子供か大人かっていったら、チークダンスも北国の春も大人に分類できるけど、、、説明が難しい。

張さんにだまされる?

 張さんきつく抱きすぎで苦しい。もともと張さんはふくよかだからそれもあって息くるしい。そんなにきつくくっつかないでよ。もしや、今までにもよくあったけど、日本人を開放的と思っていてなんでもしてよいとおもっているのではないか。張さんは私のスタイルがよいといってお世辞をいうので、私は普通に「私はちょっと太り過ぎだよ」と答えると、お腹を触って「確かに痩せてはいないね」という。失礼だよあんた。人のお腹を触ってそれはないだろう。「彼女がいたら彼女のことずっと考えているべきでしょう」といってみた。「そんなことはないよ、今は考えたくない」という。そうなのか?私の知っている中国人の恋愛とは毎日何回も電話連絡し、会ったときはずっと一緒。彼女が美容院にいくときもずっと美容院の中で待っていて、帰りは家まで必ず送り届け、歩くときも肩を抱いたり手をつないだりして歩く。彼女という言葉をきくとそういう風景を想像するのだけど、おかしいなぁ。「よい男も衝動にかられることがあるんだ」という。なんだそのとってつけたような台詞は。

 後から李にきいたのだけど、張さんは結婚していて2歳くらいの男の子がいるそうだ。私に嘘をついていたみたいだ。別に結婚していたということが判明しても張さんも私も何も困ることはないのだけど、それだからこそ、結婚しているとかそんな話しがでたときに、既婚だということをなぜ教えてくれなかったのだと思う。他の中国の友人曰くこういうことは良くあることだという。別に結婚しているかとか教える必要はないし、していると言ってもしてないと嘘ついても何問題はないという。私も絶対嘘をつかないとはいえないけれど、できるだけ嘘をつかずにいきていきたいと思っているしその方が良いと信じている。だから始めてあった人に嘘つかれるのはちょっと傷つく。しかも張さんは後に私が「今度子供の写真でも見せてね!」とまでいったのに「姪はいるけど」としらばっくれたので更に減滅だ。

テーブルにもどる

 そろそろ李と影の薄い男性も戻ってきているかと思いテーブルまで戻った。しかし李達はまだ戻ってきていなかった。一体どこをほっつきあるいているのだろうか。携帯に電話してもつながらない。またしばらくは待っていないとならなそうだ。席について待った。方さんと、方さんのつれてきたお姉さん、張さんと張さんのつれてきたお姉さん。張さんの連れてきたお姉さんは張さんが席をはずした間に勝手に張さんのタバコを吸っている。おい、いいのか。こういうお店はお姉さんのしつけはしないのか。日本式カラオケなんかはお客さんがタバコを吸ってもお姉さんはすってはいけないと教育しているところもある。こういうところはどうなのだろう。まあお客さんもそんなケチケチして怒ることはしないだろうから実際大きな問題はないのだろうけど。帰ってきた張さんも気づいていなかったし。やっと李と電話がつながってもどってきた。お酒をのみにいっていたという。踊りに来たのに酒を飲みにいくなんて、夕食のとき結構ビール飲んでたはずなのに飲み足りなかったのか?

 そろったので帰る準備をするとお姉さんたちは商売上「帰らないでもっといて」と手を引っ張る。商売だけどお姉さんに手を引っ張られたら帰りたくなくなるのではないかと思ったけど、方さんも張さんも意外にあっさりしていた。なれているのかな。

ウサギの頭

 ダンスホールをでて夜食を食べにいった。オープンテラスといったらすごく素敵なお店を想像するかもしれないけど、半分室内のような場所に調理場があって、外にテーブルが並べてあるだけのお店。そこでビールとおつまみを食べられる。そこのメインのおつまみはなんと兔頭(ウサギの頭)だそうだ。頭蓋骨の形ででてくるのでウサギだと確認できる。これは夕食のウサギの肉よりハードだ。調理方法は醤油系の味付けで煮てあるみたいだ。1人1人に使い捨てビニール手袋が配られてそれをつけて手でウサギの頭をつかんでかぶりつく。手が汚れなくてよいから合理的なんだけど私にはかぶりつく勇気がでない。皆は美味しいから食べてみなよと盛んにすすめるし、1人1つで私の分も頼んでくれているみたいなので食べないのはちょっと失礼になる。迷ったけど少し食べてみることにした。流石に頭にかぶりつく勇気はでない。お箸で少しお肉をとって食べてみる。柔らかくて美味しい。ウサギのお肉とはこんなにやわらかかったのか。けっこういける。もしこのまま成都に長期滞在したらそのうち躊躇することなく食べられるようになるかもしれない。皆がおいしいっていうのが分かった気がした。他にも色んな焼き物があった。肉類、卵、魚を炭火で焼いていた。お惣菜もあって私は枝豆とじゃが芋を注文した。枝豆は日本だと塩だけで茹でるけど、中国では数種類の香辛料が入る。味は少し違うけれどこれもまた美味しい。食べ出したらとまらない。オープンテラスでウサギの頭と枝豆をたべながらビールを飲むというのもいいかもしれない。天津では夏は外で羊肉串(シシケバブ)を食べるけど、それと同じような感覚なのだろうか。

ホテルへ戻る

 車でホテルまで帰ってきた。今日は張さんが一日運転してくれたけどビールを飲んでいたのじゃなかったっけ?夜食でウサギの頭食べていたときもビール飲んでいたのに。しかし今日は一日疲れた。何時間も車に乗ってやっと成都にもどってきたとおもったら休みもせずに出かけてそして遅くまで遊んだ。結局成都で観光といわれるものは一つもできなかった。パンダの故郷でパンダを見たかったのになぁ。明日はついに天津に戻る日だ。

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